職場の飲み会での挨拶で、偉い人が言いました。
「本日は無礼講でいきましょう。」
このとき、貴方はこの飲み会をどのように過ごしますか?
いつもと同じように、仲の良いメンバーと一緒に飲みますか?
勇気を出して、普段あまり話せない他部署の人に声をかけてみますか?
それとも役職の垣根を超えて、目上の人にアピールしにいきますか?
『本日ハ無礼講ナリ』普段は厳しい上司も、多少の粗相は見逃してくれるハズ?
今回はそんな「無礼講」にまつわるお話です。
無礼講とは言ったものの、実際のところはどうなのか?
そもそも無礼講とは、『身分・地位の差や、礼儀作法を無視して行う宴会』を指します。
ですが、ここで気になるのは、”本当に” 社内の上下関係を取り払って、対等な立場で上司と接してもいいのでしょうか?
上司からすれば無礼講とは、「役職や立場に関係なく、飲み会を楽しもう」という口実。
部下だって、純粋に会を楽しみたいし上司に対して言いたいこともあるでしょう。
ただ、どちらかが以下のようになってしまった場合、本当の意味で無礼講の酒宴にはなりません。
上司「無礼講とは言ったが、あれは嘘(社交辞令)だ!」
部下「本当は上司に言いたい(聞きたい)こともあるけど、遠慮しておこう」
そのため、どこまで踏み込んで大丈夫なのか、気にする人は多いのではないでしょうか。
よくある飲み会での失敗談/どのくらい無礼?
少し話は逸れますが、『礼儀にはずれること。また、そのさま。失礼。不躾 (ぶしつけ) 。無作法。』が無礼であり、『身分・地位の差や、礼儀作法を無視して行う宴会。』が無礼講と言われますが、その反対を意味する言葉をご存知でしょうか?
無礼の対義語は『慇懃(いんぎん)』と言い、『真心がこもっていて、礼儀正しいこと。また、そのさま。ねんごろ。』と言う意味があります。
また、『慇懃講(いんぎんこう)』という言葉もあり、慇懃講(いんぎんこう)とは、『参会者が礼儀正しさを崩さない集会。』という意味があります。
では、飲み会の席では、どこまでが慇懃(いんぎん)で、どこからが無礼なのでしょうか?
以下に整理してみました。
【とても慇懃(いんぎん)な行動】
- 料理注文時の配慮(みんなで食べれるものを選ぶ、タイミングよく追加注文する)
- 飲み物注文時の配慮(飲み物が少なくなった際にお酌したり、メニューを手渡す)
- 酔った人に対する配慮(お冷やお茶を用意したり、気分が悪くならないよう配慮する)
- 取りにくい場所にある料理を取り分ける
- 話にあぶれている人に話しかけ、みんなで楽しめるよう場を回す
【どちらかといえば慇懃(いんぎん)な行動】
- 幹事の自己紹介や開会挨拶を手短に済ませる
- 料理を取り分ける
- 空いたお皿やグラスを取り下げる
- 二次会へのお誘いや、準備(段取り)をする
- 感情的になり、朗らかになる(笑う、楽しむ)
【どちらかといえば無礼な行動】
- 羽目を外し、言葉遣いがやや軽薄になる
- 飲めない人に無理やりお酒を飲ませる、煽る
- 自分の話だけを延々とする、はしゃぐ
- 飲みすぎてしまい、酔い潰れてしまう
- 感情的になり、悲観的になる(無言、泣き出す、不平不満をこぼす)
【とても無礼な行動】
- 大声で騒ぐ、暴力を働く
- 会社や人間関係に対する愚痴・悪口を言う
- 個人のコンプレックスをイジって笑い物にする
- セクハラ、過度な下ネタ
- 感情的になり、攻撃的になる(怒り出す)
上記の4パターンのうち、【とても無礼な行動】をとってしまうと、飲み会後の人間関係にも影響があるでしょうし、良識のある人なら、そこまで軽はずみな行動はしないと思います。
ただし【どちらかといえば無礼な行動】はどうでしょう。
普通は「してはいけない事」だと思われるでしょうが、周りの状況や、程度を読みつつ行った場合は、ポジティブな効果を生み出す可能性も実はあります。
それでは、飲み会中の【どちらかといえば無礼な行動】を、無礼講の席で上手く活用した人の体験談をご紹介したいと思います。
無礼講の席で社長と肩を組み酒を飲んだ新入社員。出世頭になる!
ここからご紹介するのは、無礼講の飲み会がきっかけで、20代で部長職まで昇進したAさんの体験談です。
若くして出世頭となったAさんは、当時新入社員。
純粋に飲み会を楽しみたいという想いもありつつ、無礼講だからと言って無礼を講じても良い訳ではないことは理解していました。
ただし乾杯時の社長挨拶による「本日は無礼講で楽しみましょう」という言葉を聞き逃さなかった、当時新入社員のAさん。
社員を飲ませるために、焼酎のボトルを片手に席に近づいてきた社長に対し、焼酎を注ぎ返し、更に社長と肩を組み、
「社長も一緒に飲みましょうよ!」
「だって今日は無礼講ですよね?」
と言ったそうです。
そのとき社長は笑っていたそうですが、周囲はざわつき、後日、直属の上司の方から軽く説教を受け、目をつけられるようになったとのこと。
しかし普段の仕事は一生懸命に取り組み、物怖じせずに自分の意見を言うAさんは、たちまち仕事面で周囲の評価を集め、「飲み会でやらかした新入社員」から「Aさんだからこそできた行動・発言」という様に見直されるようになったそうです。
また社長も「元気な若手」としてAさんのことが印象に残っていたようで、たまに飲み会の出来事を社長からイジられることもあったそうな。
Aさんも、「無礼講」の飲み会という場をチャンスとして捉え、飲み会の席で、社長の人柄やお酒の進み具合を観察し、多少の無礼なら大丈夫と判断しての行動だったそうです。
結果として、Aさんは無礼講の飲み会で社長に無礼を働いた結果、周囲からの注目を集め、普段の勤務姿勢で評価を勝ち取り出世するきっかけになりました。
さいごに
いかがでしたか。
今回は無礼講についてお話しました。
飲み会における慇懃な行動や無礼な行動について整理したり、無礼講を上手く活用した人について紹介しましたが、たとえ無礼講の飲み会でも、周囲への気配りを忘れない慇懃な方がいることを忘れてはいけません。
余談ですが『”無礼”も”構”わない』と書いて『無礼講』と読む、と誤解されてる方もいますが、文章にすると勘違いであることが一目瞭然ですね。
このように、無礼を働いても構わない訳ではないので、たとえ上司が『無礼講』と言ったとしても、行きすぎた無礼のないように、全員が楽しい飲み会になるよう心がけましょう。
ただし「無礼講にしたい」と言った上司の意図を汲んで、上司との距離を一気に近づけた場合は、自分にとっても上司にとってもいい時間になる可能性もあります。
上司が、部下の無礼も笑って受け止めるつもりがあるかを確認したうえで、普段とは違う行動をとってみてはいかがでしょうか。
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