こんにちは!
飲食店の未来を創造する情報をお届けする「UTAGE(うたげ)」です。
先日、遠くで暮らす祖母と電話した際、「買い物に行くのが億劫だし、
人混みに行くのがこわい」と話していました。
スーパーは大型化&郊外化が進み、生活圏にある店舗がどんどん減っています。
それによって、日常の買い物に不自由さを感じている人が増えています。
いわゆる「買い物難民」という問題です。
経済産業省の統計では、全国に約700万以上もの買い物難民がいるそうです。
また、自宅で食事する人が増え、スーパーは多くの人が集まる場所になっています。
祖母は買いたいものがあっても密を避けるため、買い物に行くのを我慢する
こともあるとも話していました。
そんな中、「移動スーパー」という業態が注目を集めています。
株式会社とくし丸が運営する移動スーパー「とくし丸」は、
新しい切り口で買い物難民の問題を解決しようとしています。
今回は移動スーパーとくし丸について説明し、買い物難民を解決するには
どのようにすれば良いか考えます。
移動スーパー「とくし丸」とは
引用元:https://www.tokushimaru.jp/
とくし丸は、「コンビニよりコンビニエンス(べんり)な移動スーパー」というコンセプトで2012年に開業しました。
創業者の住友達也氏は、ご自身のお母様が買い物に困っている姿を見たのが開業のきっかけと話しています。
2016年には食品宅配を行う「オイシックス」などを運営するオイシックス・ラ・大地の子会社となり、
日本全国で移動スーパーを展開しています。
まず、とくし丸の事業の仕組みを説明します。
とくし丸は各地域の食品スーパーやGMS(総合スーパー)と契約し、移動スーパーのノウハウや
ブランドなどを提供します。スーパーは、車両1台につき契約金と月ごとにロイヤリティーを支払います。
商品の配達は「販売パートナー」と呼ばれる個人事業主が担います。
販売パートナーが車両を購入し、スーパーと販売委託契約を結び、
とくし丸は顧客開拓や売れ筋商品の情報提供などで販売パートナーを
サポートするという役割を担います。
また、とくし丸での販売価格は、手数料として店頭価格より10円上乗せされており、
提携スーパーと販売パートナーは商品の粗利益と手数料を分け合います。
販売パートナーはスーパーで商品を詰め込み、巡回販売してスーパーに戻ります。
ちなみに、販売パートナーは販売代行という形態のため、売れ残った商品は返品することができ
在庫リスクを抱えることはありません。
返品された商品は、スーパーが値下げして店頭で売っています。
とくし丸は、2020年10月時点で135社のスーパーと提携し、全国47都道府県で626台の
移動スーパーを稼働させています。
買い物難民を解決する存在として注目を集めており、今後もさらに広がっていくと期待されています。
移動スーパー「とくし丸」の強みとは
とくし丸の顧客数は概算で8万人程度で、今後80万人まで広がる可能性があると言われています。
現在の顧客層は団塊世代ですが、人工の多い団塊ジュニア世代が70歳になるのが2040年頃なので
あと20〜30年は市場が大きくなると考えられているのです。
とくし丸の運営会社であるオイシックス・ラ・大地は、とくし丸の運行車両数1,000台の早期達成を
目指しており、5,000台を達成すれば日本全国の買い物難民がゼロに近づくと主張しています。
では、とくし丸の強みは何でしょうか。ここでは3つ紹介していきます。
①スーパーのブランドイメージ向上に貢献できる
とくし丸と契約するスーパーは、「とくし丸と契約するとブランドイメージが上がる」と話します。
とくし丸を通じてスーパーのことを知ってもらい、実店舗への来店に繋げる狙いがあるのです。
とくし丸を通じて新たなニーズをキャッチできた事例もあります。
もともとスーパー業界では、世帯人数の少ないシニア層に向けて少量の商品を開発する必要があると
考えられていましたが、実は顧客が求めていたのは大容量の商品だったということが分かりました。
大容量の商品はかさばるので、持ち帰るのが大変だから買わなかっただけで、とくし丸であれば
家の前まで来てくれるので喜んで購入するとのこと。
このように、提携パートナーであるスーパーにもメリットのある取り組みだからこそ、
とくし丸が支持されているのです。
②お客様の自宅前まで商品を届けられる
今まで、店舗はお客様に来てもらうのが当たり前とされてきました。
ですが、とくし丸はお客様の自宅を巡回して販売しています。
お客様は自宅前に停まった軽トラックから安心して快適に買い物を楽しめます。
また、お客様から「次は○○を持ってきてほしい」という要望が出れば、
販売パートナーが次回の訪問時にその商品を届ける「御用聞き」のような
役目も果たすことができます。
外出を自粛しているお客様の中には、とくし丸が来るのを心待ちにしている方も多いようです。
このように、とくし丸は商品を販売するだけでなく、コミュニティとしても機能していると言えます。
③関わるすべての人と会社にメリットがある
とくし丸は、利益が出る仕組みをつくることで継続的な取り組みを可能にしました。
これまで、とくし丸以外にも宅配や移動スーパーを行う事業者がありましたが、
赤字が続き継続できなくなることが少なくありませんでした。
とくし丸は、スーパーからのロイヤリティーに加え、店頭価格に10円を上乗せする
仕組みをつくり本部、スーパー、販売パートナー全員に利益が出るようになっています。
どれだけ良いサービスでも、継続できなければ意味がありません。
お客様はもちろんのこと、とくし丸に関わるすべての人と会社がメリットを得て
事業として継続できることが、とくし丸の強みです。
移動スーパー「とくし丸」は買い物難民を救えるか
とくし丸は、今までにない仕組みを構築し、関わるすべての人や会社にメリットのある形で
買い物難民ゼロを実現する存在として期待されています。
では、とくし丸の活動がより広がっていくには、どのようなことが必要なのでしょうか。
ここからは、とくし丸の課題について説明していきます。
①販売パートナーを育成すること
とくし丸の売上高は急速に伸びており、2020年3月期の売上総額は100億円を超えています。
事業成長に伴い、必要となってくるのがお客様に商品を届ける販売パートナーの確保です。
販売パートナーの募集に際し、どれくらい収入を得られるのかは重要な指標だと思います。
とくし丸の公式ホームページ「販売パートナー収支シミュレーション」によると、
まず開業に必要な資金は340〜360万円となっています。
次に収入ですが、これは稼働日数と日販額によりますが、たとえば週5日で平均日販が
約14万円の場合、月収は約43万円程度となります。
週6日で日販15万円以上売り上げると、約58万円ほどの月収を得られるので、
収入は販売パートナーの販売力によると言えるでしょう。
実店舗に比べて初期費用を低く押さえられること、在庫リスクなく安定的に収益を得ることが
できるので開業希望者は増えていますが、今後は、販売パートナーの育成が重要になってくると思います。
高い売上を上げている販売パートナーの傾向を分析し、新人の販売パートナーでも収入を得ることができる
育成プランを構築することで、より多くの優秀な販売パートナーを確保することができると考えます。
②サービスを充実させること
とくし丸は、お客様に商品を届けるだけでなく、コミュニティとしての役割も担っているとお伝えしました。
そのため、将来的には物販だけでなく、お客様の要望に沿ったサービスも提供する必要があると思います。
例えば、シニア層向けの健康サービス。お客様との距離が近いからこそ、一人ひとりに合った健康に関する
アドバイスが出来ると考えます。
最近では、総合スーパー大手のイトーヨーカ堂と提携し、見守りサービスを開始しました。
このように、お客様にとって欠かせない存在となることが、今後の成長のカギになるでしょう。
③行政との協力体制を強化すること
とくし丸は、環境省が主催するグッドライフアワードにて環境大臣優秀賞を獲得しているほど、
国にも認められている良い取り組みのひとつです。
社会問題をビジネスの力で解決する、いわゆるソーシャル・ビジネスは、行政との補完関係が大切です。
とくし丸のような民間企業の強みは自由な発想と行動力、行政の強みは資金力と地域からの信頼です。
とくし丸がより広がっていくためには、行政の協力を得て課題を乗り越えていく必要があるでしょう。
おわりに
今回は、移動スーパー「とくし丸」について説明しました。
とくし丸は、買い物難民という社会問題を解決する可能性のある取り組みです。
同社が目標に掲げている「運行車両数5,000台」を達成することで、
日本全国の買い物難民をゼロにできることが分かりました。
そのためには、販売パートナーを育成し、サービスを充実させること、
さらには行政との協力体制を強化することが大切です。
飲食業界に関わる人たちは、ビジネスを通じて社会問題の解決に
貢献できないかを考えてみてほしいと思います。
社会問題の解決に繋がることが、業界全体の発展に繋がることは間違いないですし
お店のブランドイメージが向上し、売上げアップにも繋がります。
今後も、とくし丸に注目して自店舗での取り組みのヒントにしてほしいと思います。
これからも「UTAGE」では飲食店様の売り上げ、利益アップに貢献する情報を発信していきます。