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セカンド童貞が飲み会でワンチャン持ち帰りやってみた2話

〜前回までのあらすじ〜
IT企業に勤めている社会人2年目の山本 拓哉(やまもと たくや)こと【ヤマタク】は、彼女にフラれたにも関わらず、落ち込むこともないあっさりとした日々を過ごしていた。

そんな中、仕事もプライベートも豪快な会社の先輩である【山本さん】から、いきなり飲み会の幹事をお願いされる。
もちろん、飲み会の幹事をしたことがない主人公は焦り困り果てる。

そんな主人公の運命はいかに。

山本さんは僕に向かって、一言を言った。

「お店を予約していないから、そこから頼む!」

このまま電話を切ったら、全てがリセットされて無かった話になるのではないかと一瞬考えた。
いつも仕事ができるイメージしかない山本さんから口にされた一言は、耳を疑った。

「え!?、や、山本さん、冗談は本番の飲み会の時だけにしてくださいよ!」
「冗談じゃないよー♪」
「本当にお店の予約とかしていないよー♪」

仕事で嘘や誤ったことを絶対に言わないのも山本さんを尊敬しているところだが、今回ばかりは本当に嘘であっていいと思った。
それか、テレワーク下で自分の仕事に対する姿勢を見かねて、試しているのかなとも思った。

「自分、飲み会の幹事とかしたことがないから、どんなお店が良いとか分からないのですけど。」
「居酒屋チェーン店でも、大丈夫だったりします?」

山本さんは間髪を入れず、次のように答えた。

「チェーン店もいいと思うけど、せっかくだったら、テーマを決めて選んでみない?」
やはりかと思ってしまった。

山本さんは仕事以外のプライベートなどでも、いつも真剣なのだ。
相手が喜ぶのであれば、そのために何でも全力を尽くすタイプ。
だからこそ、男女や社内外問わずモテモテなのだ。

「そうですね、テーマ性って大事ですよね。」
「そしたら、山本さんのオススメがあったら、教えて頂けないでしょうか。」すかさず山本さんから、フードバックというサイトのURLが送られてきた。「そのサイトに記載してある、ダイヤモンドダイニングのお店だったら、何でも大丈夫だよー♪」
「ありがとうございます!すぐ確認して予約します!!」

山本さんがオススメしてもらったことで、外れたことは一度もない。
旅行先、映画、スポーツ観戦、コンビニのスイーツまで、この人はどこから情報を仕入れているのかとつくづく思う。
電話を切ったあと、早速フードバックのサイトを確認してみた。
なるほど、これはモテる訳だと理解し言われた通りのお店を予約した。

最初はやる気があまり湧かなかったが、準備するにつれて、ワクワクしてきた。
まるで部活動のようだ。

始まるまでは、練習に行きたくないことはしょっちゅうだったが、始まってみると真剣にしてしまう。
その感覚ととても似ている。
普段の仕事では味わえないような感覚を体感しているようだった。
あとは純粋にどんな子が来るのかが、とても楽しみだ。
それは山本さんを信じよう。

「いよいよ今日だな。」

飲み会の前の日の夜は、まるで小学生の遠足気分だった。
お出かけする前に、あんなにも鏡と財布を確認したのは、元カノと初めてのデート以来だったかもしれない。
ファッションに自信がある方ではないので、白シャツにジーパンと可もなく不可もない服を選んだ。
わりかし清潔感は気にする方だと思うので、総合的に問題ないと思う。
一回そういうことにアンテナを張ると、不思議と目に入ってくる情報が変わってくるなと実感する。
こんなにも自分の身なりを気にして乗り込む山手線は、人生で初めてだ。

「次は〜代々木〜代々木」
「新宿まで、あともう少しだな」

時計の進んだ針だけを見ると、30分経過しているが、全然そんな風には感じられなかった。
無理もない、今日は遠足気分なのだ。

飲み会のいろは的なことを若干山本さんから教えてもらったが、ほとんどは自分で経験した方が分かるよと背中を押してくれた。
会社の後輩とはいて、プライベートまで面倒を見てくれるので、もはやこの方は本当に一体何者で、どこを目指しているのかが分からない。
新宿で降りて、お店の場所をネットで確認する。

東口を出てすぐのお店だったので、3分程度で着いてしまった。
「飲み会の開始が18時だから、あと30分か。」
結構早めに来たのは理由がある。

僕にとって他の男性陣も初めましてになるので、事前にコミュニケーションを取るために、集合を早めにしているのだ。
連絡した通り、20分前になる頃には男性陣は集合していた。
面子はもちろん山本さんが誘った友達で、年齢は僕と同じくらいだった。

「山本さんの友達の佐藤です、今日はよろしくお願いします。」

佐藤くんが山本さんと繋がっていて、あとの2人は佐藤くんが誘った会社の同僚である。
佐藤くんと山本さんとの繋がりを聞くと、共通の友人がいて、合コンで知り合い仲良くなったとのこと。
ご縁も大事にされているのか、と思った以上に驚いたのが、佐藤くんが山本さんのことをとても信頼していた。
今日も急に幹事が僕に変わったにも関わらず、何ともなっていない。

「初めましてだと思いますけど、全然気にしなくて大丈夫ですよー。」

それは間違いなく、佐藤くんが山本さんのことを信頼しているからに違いないと彼の言動から簡単に読み取れた。
顔も心もイケメンとは反則である。
いくら歳上とはいえ、2回くらいしか会っていないにも関わらず、人の心を掴んだ山本さんも反則である。
万全な状態で飲み会を迎えれそうだった。
初めて幹事をする自分でも驚くほどである。
だが、これよりも驚くことがこの後起きる。

「5分前になったけど、そろそろ来るのかな。」

飲み会開始の5分前になった時である、女性陣が現れた。
5分前に来るところが、既に好感度が高い。
幹事の女性がしっかりしているに違いないと思った。
それもそうであると思えたのは、女性幹事の顔を見た瞬間だ。

「あ、、、。」

奇跡なのか運命なのか分からないが、事実として目の前にいたのは、別れたばかりの元カノだった。
席に着いて顔を上げるまで気付かなかったが、紛れもなく元カノだった。
あまりの衝撃的な状況に目があった瞬間、お互い1秒くらい固まってしまった。周りがどう見ても異変が起きたと分かるくらいだった。
僕は慌てたままだったが、元カノは冷静さを取り戻していた。

「何飲まれます?」

主演女優のようなあまりにも自然な対応だった。

「あ、えー、えーと、ウ、ウーロン茶で。」

やってしまったと思った。
お酒を頼むはずが、動揺して喉が渇いていたのであろう。
これには流石に周りも異変に気付いた。

「あ、あははははは、、、」

こんなにもベタに笑いで誤魔化したのは、人生初めてだ。
この瞬間に完全に心が折れてしまった。
高校時代、バレーボールでボロ負けしている試合を思い出すかのようだった。どうせ代わりを頼まれた飲み会だからいいかと開き直ってすらいた。
そんな自分を正当化しようとした時、神の一言が響き渡った。

「すっごい顔しているね、でも、まだ試合終了じゃないよ。」
元カノからだった。

その一言で変な空気が一気に笑いに変わった。
本当に神なのではないかと思った。
こんなところで、助けられるとは思わなかった。
その後は順調に進んだ。
良かったと、ホッとしていると衝撃的な事実を耳にする。

佐藤くんの何気ない質問だった。

「そういえば、舞ちゃんと山本さんって、何繋がりなの?」
「実は同じ大学のゼミの先輩なんだよね。」
「今の会社の就活とかで、めっちゃお世話になったの。」
「今でも、仕事とか色々と相談に乗ってもらっているんだよねー。」
「あ、もちろん彼氏じゃないよー。」

驚き過ぎて、席を外してしまった。
まさかそんなことがあるのかと思った。
どうにか心を落ち着かせ元に戻ると、何事もないように進んだ。
あとは楽しく時が過ぎていった。
想像以上に盛り上がり、やって良かったと思える会だった。
解散した後も、いい感じの雰囲気が漂っていた。
家路に着こうと、JRの改札を通ろうとした瞬間、元カノから電話がかかってきた。

「今日はありがとう、久しぶりに話せて楽しかったよ。」

舞から電話が来る時は、大抵何かして欲しいときだ。
彼女だったときは、どこかに連れてってという合図である。

「それは良かった、こちらこそ最初助けてくれてありがとう。」
「私も動揺したけど、たく君ひど過ぎ。」
「でも、たく君らしくて、私は良かった。」
「そうか?」
「ねぇ、今日私がたく君を助けたから、お礼して欲しーなー。」
その通りだった。

だが、舞がこの合図をするのは本当に好きな人に限られていることも知っていた。
「そう言うと思った、何して欲しいんだよ?」
「行きたいお店があるから、付き合ってくれない?」
「分かった、でも彼女じゃないから、ワリカンだぞ。」
「うん!私たちもう一回やり直そー。」
奇跡のような1日だった。

神様が今まで頑張ってきたご褒美をしに来たのかと思った。
高揚した気分でベッドに入ると、山本さんから一通のメールが来た。
「今日は飲み会幹事、ありがとう!僕からのプレゼントは受け取ってくれてありがとう、末永く幸せに。」
メールを読み終わったあと、僕は何も返信しなかった。

過去のお話はコチラ
〜第1話〜

 

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