~前回までのあらすじ~
会長の息子が来年度に営業部1課に
入社するということで、飲み会商事営業部の新人歓迎会が
人事部の中で話題になっていた。新人歓迎会の幹事は営業部1課、2課から
代表1名を選出し、営業全体の投票で決められると、
さとしは2課の課長から言い渡された。さらに2課の課長はさとしではなく、
1課の木村たけるに投票すると言うのだ。困惑するさとし。
そんなさとしに同期の北川ユイから救いの手が。
社長が参加する営業部の新人歓迎会まであと3ヶ月…
【2020年3月 月曜日 PM 20:00 ●●線車内】
昨年末の2課の忘年会の幹事をおれがした時の“お店“と”参加費“か。
おれは飲み会の幹事として何が足りなかったのだろう…
さとしは食堂で同期のユイから言われた言葉を、
帰りの電車の中でずっと考えていた。
”飲み会の幹事にとって大切なこと”か…
さとしはユイが伝えたかったことを考えながら、
忘年会中の先輩たちのことを思い出そうとしていた。
忘年会で選んだお店は、課長が好きな飲み放題のメニューに
日本酒が豊富に含まれている、和食のお店にしたよな…
しかも、全国各地の日本酒を選べたから、
課長も喜んでいたはずだ。
料理だって日本酒に合う和食が中心で、味も美味しかったのを
よく覚えている。
参加費は5,500円だったけど、一年をしめくくる忘年会だし、
それほど高いってわけでもないよな。
お店も参加費も何も問題ないじゃないか。
課長が何を考えているのかまったくわからないよ…
さとしは帰宅後も考え続けたが
結局答えを出すことはできなかった。
そして、そのまま翌日をむかえた。
【2020年3月 PM12:15 社員食堂】
さとしはいつものようにユイと社員食堂にきていた。
今回注文したのは日替わり定食。
ごはんおかわり自由なのが魅力で、
一番人気のメニューとなっている。
うちの会社は景気がいいな…と思いながら、
さとしはエビフライに箸をのばそうとしていた。
[speech_balloon_left1 user_image_url=”http://57.180.186.170/wp-content/themes/be_tcd076/img/no-avatar.png” user_name=””]ユイ「さとし君♪」
「昨日はあれから課長に言われたこと考えてたんでしょ?」
「何か分かった?♪」[/speech_balloon_left1]
ユイは楽しそうにさとしに話しかけた。
今からエビフライを食べようとしてたのに…
と怪訝な顔をするさとしだったが、
ユイからの質問をまっていたところでもあるので、
エビフライを皿に戻し、ユイに話し始めた。
[speech_balloon_right1 user_image_url=”http://57.180.186.170/wp-content/themes/be_tcd076/img/no-avatar.png” user_name=””]さとし「それがまったく思い当たる節がないんだよ…」
「お店は課長が喜びそうなお店にしたし…」
「参加費だって忘年会だからそんな高いわけでもないし…」[/speech_balloon_right1]
ユイはふと疑問に感じたことをそのままさとしに伝えた。
[speech_balloon_left1 user_image_url=”http://57.180.186.170/wp-content/themes/be_tcd076/img/no-avatar.png” user_name=””]ユイ「ちょっとまって、さとし君!」
「課長が喜びそうなお店ってどんなお店を選んだの?」
「それに忘年会だから高くないってどういうこと!?」[/speech_balloon_left1]
ユイが驚いた顔で話しかけてくるのを見て、
さとしは自分の感覚がズレていたのかもしれない
と思い始めた。
[speech_balloon_right1 user_image_url=”http://57.180.186.170/wp-content/themes/be_tcd076/img/no-avatar.png” user_name=””]
さとし「な、なんだよ!ユイ!そんな驚いた顔をして!」
「2課で一番えらい課長の好きな日本酒が飲み放題メニューにあるお店にしたんだよ!」
「年をしめくくる忘年会なんだから先輩たちだってみんなパアって飲みたいだろ?」
「おれなりに必死に考えてやったんだ!悪いかよ!」
[/speech_balloon_right1]
さとしの言うこともたしかに分かるのだが、
ユイは残念そうな表情を浮かべ、
さとしに問いかけた。
[speech_balloon_left1 user_image_url=”http://57.180.186.170/wp-content/themes/be_tcd076/img/no-avatar.png” user_name=””]
ユイ「たしかに、さとし君の言うこともわかるよ?」
「でもね、忘年会に参加する人たちって課長だけじゃないよね?」
「それに課長の立場に立って考えたら、どんな忘年会にしたいと思うかな?」
「あと、先輩たちはみんなさとしくんみたいに独身の方ばかりじゃないよね?」
[/speech_balloon_left1]
ユイの問いかけにさとしは頭がパンクしそうになっていた。
さとしのことを想い、ユイは一つ一つゆっくり話しかける。
[speech_balloon_left1 user_image_url=”http://57.180.186.170/wp-content/themes/be_tcd076/img/no-avatar.png” user_name=””]ユイ「さとし君、忘年会には2課のみなさんが参加されたんだよね?」[/speech_balloon_left1]
[speech_balloon_right1 user_image_url=”http://57.180.186.170/wp-content/themes/be_tcd076/img/no-avatar.png” user_name=””]さとし「ああ、そうだよ。うちの課は仲がいいから全員参加したさ。」[/speech_balloon_right1]
[speech_balloon_left1 user_image_url=”http://57.180.186.170/wp-content/themes/be_tcd076/img/no-avatar.png” user_name=””]
ユイ「うんうん!それなのにさとし君は課長が喜ぶことだけを考えてお店を選んだの?」
「ほかの先輩たちのことは何も考えなかったのかな?」
「たしか2課は男性と女性が5:5くらいの割合だったよね?」
「日本酒が好きっていう女性もそんなに多くないんじゃないかな?」
[/speech_balloon_left1]
[speech_balloon_right1 user_image_url=”http://57.180.186.170/wp-content/themes/be_tcd076/img/no-avatar.png” user_name=””]
さとし「たしかに…そうかも…」
「忘年会のとき、普段はよくお酒を飲む女性の先輩も、ソフトドリンクを飲んでる方が多かった気がする…」
「あのお店、飲み放題メニューが日本酒、焼酎、ビール、ソフトドリンクだったから。」
[/speech_balloon_right1]
昨年末の忘年会の様子がさとしの頭の中に
鮮明に浮かんできた。ユイが伝えてくれたとおり、
課長だけのことを考えてお店を選んだため、
大半の女性の先輩にとっては、苦手なお酒ばかりのお店と
なってしまっていたのだ。
ユイからの一つ目のメッセージだけでも、さとしにとって
十分ありがたいものとなった。
二つ目の
”それに課長の立場に立って考えたら、
どんな忘年会にしたいと思うかな?”
について、ユイはさとしに話し始めた。
さとしの飲み会幹事としての成長物語がついに始まる。
To be continued...
幹事サバイバル 第4話「飲み会の幹事として大切なこと」
http://57.180.186.170/kanjimusou5/