-前回のあらすじ-
この物語は普通の男子高校生が背伸びをして、女教師へ淡い恋心を描いた甘酸っぱいストーリーである。
何かに秀でている訳でもなく、普通に17年間生きてきた主人公のひろゆき。
スポーツや勉強を頑張ってきたわけではない。
たまに青春をしている人を見ると落ち込むことがあるが、自分と比べても仕方がないとちょっと諦めている。
そんなひろゆきに思ってもいないことが起きる。
-高校2年生始業式-
高校1年生から2年生になったからといって、何かが大きく変わることはない。
変わることといったら、教室と担任の先生くらいだ。
僕はいつものように家を出て学校に向かった。
「何か面白いこと起きないかな」
最近の口癖はこれである。
他の人からつまらない高校生だと言われても仕方がない。
それは自分が一番自覚している。
いつも通り学校までの道のりは自転車で向かう。
春の風は爽やかで心地よいものだが、今の自分には効果がない。
沿道のきれいな桜並木が、学校までの道のりをアシストしてくれているにも関わらず、いつも通りと思ってしまう自分がいた。
新しいクラス表が玄関に展開されていた。
僕の新しいクラスは2-Eだった。
他の生徒にとってはお楽しみの瞬間だが、自分にとっては関係ない。
前のクラスで仲の良かった人がいなかった訳ではないが、その友達と一緒になっても別に楽しみが格段に変わることはないと悟っていたからだ。
「新しいクラスの人とも適当に仲良くなろう。」
心の底がこういった状況なのだ。
根暗やコミュ障という訳ではないが、人とは距離を置きがちだった。
友達をたくさん作って、輪の中心人物になり、青春を謳歌したいと思わないのも自分の心の底が影響しているのかもしれない。
新しい教室に入り始業式が始まるまでの間、僕は適当にクラスメイトと雑談した。
-始業式-
誰もが同じ思いを抱いたことがあるかもしれないが、校長先生の挨拶というのはなぜこうも面倒なのだろうか。
「早く終わらないかな。」
内容を理解して実践している生徒はいるのだろうか。
もっというと他の教師陣も、校長先生が発しているメッセージを受けっているのだろうか。
自分の性格の悪さが浮き彫りになってしまう。
そんな他の人からしたらどうでもいいことを考えているうちに、校長先生の挨拶が終わっていた。
「校長先生、挨拶ありがとうございました。」
教頭先生が甲高く声を出している。
「続いては、各クラスの新しい担任の先生を読み上げます、1年生を担任する先生は壇上にお願いします。」
「1-Aは、」
教頭先生が順次読み上げている。
僕は壇上で紹介されている先生に目線すら向いていなかった。
1年生の担任ということもあるが、そもそも興味を示していなかった。
「以上が1年生の担任の先生になります、1年生の担任の先生は降壇をお願いします。」
「次は2年生を担任する先生を読み上げます、2年生を担任する先生は壇上にお願いします。」
2年生の担任の先生が続々と壇上に上がっていく。
自分の学年にも関わらず、僕は先ほどと同様興味を示していなかった。
「2-Eの担任は育田ちひろ先生です、新しく本校へ赴任されました。」
「うん?育田ちひろ、、あれ、、」
僕の目線の先は瞬時に壇上に向いた。
頭の中はそんなはずはないという言葉で溢れていた。
なぜなら、こんなことがあるわけがないと思っていたからだ。
僕が小学生の頃に一目惚れをした高校生のお姉さんが、10年経って担任の先生になるわけがない。
耳を疑ったが、壇上に立っている2-Eの担任の先生は紛れもなく、10年前に出会った育田ちひろさんだった。
高校時代に比べて、髪を伸ばしていたが天真爛漫な雰囲気は昔そのものだった。
「ち、ち、ちひろさん、、」
あまりにも驚いてしまったので、気付かない間に声に出していた。
周りも僕の驚いている様子を不思議そうに見ていた。
だけど僕は、そんなことが気にならないくらい笑顔で満ち溢れていた。
-ホームルーム-
その後、3年生の担任の先生が降壇すると、始業式が終わった。
後でクラスメイトに言われたが、始業式が終わった後も笑みが溢れていたらしい。
急に見た目の雰囲気が変わったと思って、驚いたのであろうが無理はない。
僕にとって衝撃的かつ、これから学校生活が面白くなりそうな予感しかないからだ。
気持ちが高揚している中、ちひろ先生が教壇に立ちホームルームが始まった。
「みなさん初めまして育田ちひろです、これから1年間よろしくお願いします。」
さっきまで、本当は夢なんかじゃないかと思っていたが、この瞬間現実であることを再認識した。
ちひろ先生とクラス全員で軽く自己紹介を一緒にした。
僕以外のみんなも、徐々にちひろ先生の明るさに心を惹かれていくのがわかった。
「じゃあ、このクラスをまとめる学級委員長を決めようと思います、立候補したい人はいますか?」
このタイプの内容は基本的にみんなやりたがらない。
流石にちひろ先生でもこれは立候補で決まらなかった。
「じゃあ、先生の指名制でいこうと思います。」
「えーーーーー!!!」
クラス全員がブーイングをしていた。
それを全く気にせず、ちひろ先生は1人の生徒の名前を呼んだ。
「それじゃ、このクラスの学級委員長をするのはひろゆき君、君に決めた!」
「え、僕ですか?」
ちひろ先生の方を見ると、笑顔でうなずいていた。
僕はその表情をしたちひろ先生を裏切ることができず、学級委員長を引き受けた。
今回のプレゼントはジンジャエールではなかった。
「Coiラボ」は、今後も日常の中で発展したご縁や、新しい出会いに繋がる気付きをストーリーを通して発信していきます。