ー前回のあらすじー
高校でバスケ部に青春を注いでいる翔太は、通学路にある花屋で不思議なお姉さんと出会う。
お姉さんは男子高校生なら誰もがワクワクしてしまう生粋のロリ巨乳で、他の男子生徒が見ても、立ち止まって二度見してしまうほどの美貌だ。
そんなお姉さんのことが気になって仕方がないので、何回か花屋に足を運ぶが会話がはずまず一向に仲良く慣れるきっかけがない。
突破口がないまま、もやもやした状態で学校生活を送っている翔太の運命やいかに。
ー学校ー
今日は珍しく2限と3限が自習だった。
この学校の自習はいくつかパターンがある。
全部で3つだ。
1つは教室でのんびりするパターン。
これは友達と話せて楽しいが、勉強をするにはとても不向きだ。
そんな人のためにあるのが、2つ目のパターンである自習室だ。
自習室があるほど、この学校は勉強に力を入れている。
集中して勉強をしたい人は、間違いなく自習室に行く。
3つ目のパターンは図書室で本を読むことだ。
読書を大事にしている学校で、朝のホームルームで読書をする時間が組まれているほどである。
そのため、図書室も広く本のバリュエーションも多い。
僕は久しぶりに図書室へ行くことにした。
理由は気分転換である。
「あれ?なんかあったの?」
図書室に入ると早々、名物先生が話しかけてきた。
メガネと長い髪がトレードマークの山本先生だ。
図書室の秘書をしている山本先生は、この学校に赴任してから既に10年を経過している大ベテランだ。
「先生こそ、暇なんですか?」
「失礼な!ちゃんと仕事をしている。」
「だって、手元に読みかけの本が積んであるじゃないですか?」
「これは、インテリアだよ。」
「いつも通りボケが冴えていますね。」
「でしょー、若作りしているから。」
山本先生は40代後半らしいが、全然そうには見えない。
大学までバスケをしており、インターハイやインカレを経験しているバリバリのスポーツマンだ。
そのため、常に体全身にエネルギーがみなぎっているかのように、いつも元気で明るい。
だが、教えているのは体育ではなく、数学だ。
情熱的な部分がありながら、論理的な考えをするところも先生の魅力である。
この学校で4年前まで女子バスケ部の顧問をしていた。
女子バスケ部はそんなに強くなかったが、山本先生が顧問になってから劇的に強くなった。
そのおかげで、全国大会常連校の仲間入りを果たした。
山本先生が顧問を引退される最後の年で、インターハイとウィンターカップで優勝をしている。
これは本当にすごいことだ。
現在は、山本先生は顧問を引退し、教え子の若い先生が顧問をしている。
山本先生がバスケ部を指導する立場から離れても、成績はとても好調だ。
山本先生が大事にしてきた勝利の方程式が、次の世代へ受け継がれている証拠である。
「そのエネルギーがあったら、まだバスケ部の顧問できますよ。」
「いやー、もう後輩の指導者で十分。」
「先生のファン、まだ学校にたくさんいますよ。」
山本先生に指導されたいと願っている生徒や関係者は少なくはない。
だが先生は、次世代の指導者を育成するために、早々に顧問の座を後輩に譲ったのだ。
「ありがたいねー、まあ小学生だったら教えてもいいかもね。」
「そうなんですね、そういえば昔小学生を指導していたと、おっしゃっていませんでしたか?」
「そうそう、この学校に赴任する前だから10年くらい前の話かな。」
「そんなに前の話なんですね。」
「こう見えて、小学生に教えるの上手なんだ。」
「自慢だけど、自分が指導したミニバスのチームでも全国大会優勝したことがある。」
「本当ですか!?先生めちゃくちゃすごいじゃないですか。」
「そうなんだよ、先生すごいの。」
山本先生はノリが良くジョークをかますことが多いが、本当にすごいことをいくつもしている。
弱かったチームを強くするのは、並大抵のことではない。
まして、自分が強くしたチームで全国大会優勝は、漫画にできそうな夢みたいな話である。
「まあ、4年前も10年前も優勝できたのは、選手が良かったからかな。」
「そうなんですか?」
「うん、ミニバスで全国大会優勝した時のメンバーがこの学校でもバスケをしていたの。」
「それは、顧問としてやる気出ますね。」
「間違いない!歴代で一番強いと思っていたら、高校でも全国優勝しちゃった。」
全国優勝をしちゃったとノリで言える先生は本当に只者ではないように感じた。
「そういえば、その時の写真がこの図書室にも置いてあるよー。」
山本先生はおもむろに、写真が保管してあるアルバムの本棚に手を伸ばした。
4年前のことだから、そんなに昔のことではない。
アルバムも綺麗な状態で保管されていた。
「うわ、懐かしいなー、みんな元気かな。」
「この時のインターハイの会場、すごく良かったな。」
山本先生はアルバムを開くと、思い出に浸りながら写真をめくっていた。
「へー、なんかいいですね。」
僕も興味半分でアルバムを一緒に眺めていた。
すると、見たことがあるかも知れない人が目に写った。
その人は、バスケ選手にしては小柄で華奢だった。
しかし、彼女は集合写真の真ん中に堂々と写っている。
まさかかと思ったが、気付いたら口にしていた。
「花屋のお姉さん?」
「あれ?るみのこと知っているのか?」
「知っているというか、見たことがあるというか、学校近くの花屋で働いているお姉さんにそっくりだったので。」
「そうだよ、この写真の真ん中にいるのが、今花屋で働いているるみだよ。」
「全国優勝した時のキャプテンをしていたんだ。」
山本先生は、僕が悩んで頭を抱えている姿を気にせずストレートに言った。
「え、、。」
今度は驚きすぎて、僕は言葉を失っていた。
「真ん中の選手、花屋のお姉さんだったんですね、しかもキャプテン。」
「そうだよ、しかもミニバスで全国大会優勝した時のメンバー。」
「体格には恵まれなかった分、スピード、シュートの精度、バスケセンスは飛び抜けていたよ。」
「ミニバスも高校も全国大会を制したのは、間違いなくるみがいたからだ。」
「るみがチームをまとめ、勝利に導いていた。」
耳を疑ったが、山本先生が嘘を言っているように到底思えなかった。
それを知った僕は急激に花屋のお姉さんに会いたくなった。
自習のつもりが、また一つ大きなことを知った。
「Coiラボ」は、今後も日常の中で発展したご縁や、新しい出会いに繋がる気付きをストーリーを通して発信していきます。