あらすじ
SEとしてハードワークをしている亮太は、大学時代の同期に誘われて合コンに参加した。
プレゼント交換会で持参したスノードームのプレゼントが、気になっていた宏美とまさかのド被り。
周りに茶化されながらも、良い雰囲気で合コンを終えた亮太の元に、初詣に誘う宏美からのLINEが来るのであった。
〜合コン翌日〜
クリスマスの合コンの後、気になっていた宏美からLINEで初詣に誘われた亮太。
オッケーの返事はしたものの、こんなことになろうとは…
なんと、合コンの前に対応していた案件が再炎上したのであった。
合コンがあった日の次の日からは、仕事に缶詰になり、徹夜するほどではないにしろ、対応に追われ年末年始はあっという間に過ぎ去ってしまった。
〜年明け、1月8日〜
カタカタカタカタ…
いつものようにパソコンのキーボードを叩く音だけが響く。
いつもと違うのは、時折り
「はぁ〜〜〜…」という自分の長いため息が混ざることだった。
クリスマスに良い出会いがあり、順風満帆かと思われた亮太は、今これまでにないほど凹んでいた。
なぜかというと、宏美との初詣デートがリスケになったから、という理由が大きい。
あの合コンの後、家に帰り最高の気分で就寝してものの、早朝から上司の電話で叩き起こされた。
電話の内容は、自分の担当案件が再度障害を起こしている、というものだった。
亮太は、
(この案件、次から次へと問題が起こるな…)
と悪態をつきそうになりながら電話に応対していた。
立て続けに問題が起こる根本の原因は、開発している基幹システムにあるらしい。
この基幹システムに紐付く案件にことごとく障害が起きている。
そこで、システムの利用者が少ないこの年末年始の休暇中に、基幹システムを総点検しようという流れになり、緊急対策チームが結成され、そのチームに亮太も抜擢されたのだった。
亮太は能力を買われて仕事を任せてもらえることは素直に嬉しかったが、初詣のデートのことが気掛かりだった。
次の日から日中夜行われた対策会議で洗い出されたタスクを、社が選りすぐった少数精鋭で処理するには、年末年始は全部返上になりそうだった。
機密事項も多いシステムのため、人海戦術はとれないとのことだ。
断腸の思いで、亮太は宏美に、
『ごめんなさい。初詣なんですが、年末年始どっぷり仕事になりそうで、三が日とかには行けなさそうです。また予定見えたら連絡します。』
とLINEした。
このLINEを送ってから早くも2週間程が経過していた。
ようやく仕事の方が落ち着いて来て、仕事以外のことに頭が回るようになると、宏美のことをついつい考えてしまう自分がいた。
亮太の頭の中では、
(前々から初詣の約束をしていたのに、突然のリスケのLINEを送ってからこの1週間働きづめで、スマホを触る暇もなかった…今更初詣って感じでもないし…連絡とりたいけど、どうLINEしよう?)
と、ああでもない、こうでもないという堂々巡りが繰り返されていた。
そんな時に、スマホから着信音が鳴り響いた。
古田からだった。
『よっ!あけおめ!宏美ちゃんとの初詣はどうだった?』
「まだいってない…」
『はぁ!?何やってんだよ?なんかあったのか?』
亮太はことの次第を古田に説明した。
『なるほどなー。お前の気持ちもわからんでもないけど、まずは連絡してみなきゃ、わからないんじゃないか?』
「そりゃあ、そうかもしれないけど…」
『まぁ、勢いも大切じゃないか?とりあえず連絡してみろよ!じゃあ、健闘を祈る!!』
「あ、おい…」
と言う間に古田は電話を切ってしまった。
「でも、確かに連絡してみなきゃわからないか…」
亮太は意を決して、
『こんにちは。全然連絡してなくてごめんなさい。リスケにしてもらってた初詣なんですが、来週とかでどうですか?初詣には遅すぎるかもだけど。』
と宏美にLINEした。
すると、程なくして、
『こんにちわー!あけましておめでとうございますー!!来週全然空いてますよー!初詣行きましょー♪』
という、元気な宏美からのLINEが返ってきた。
意外な返信だったが、ひとまず嫌われてはいなそうだと安心する亮太であった。
その後も何通かLINEをやり取りして、来週の土曜日の12時に行こうと話していた神社の最寄り駅に集合することになった。
休みの日がこんなに待ち遠しいのは久しぶりだ。
~初詣デート当日、11:45~
亮太は改札前で宏美を待っていた。
都内でも有数の神社の最寄りだからか、初詣のシーズンを過ぎても参拝者は多いようで、改札前の人通りは多い。
今朝起きてから出かけるまで、久しぶりに宏美に会える嬉しさと緊張で落ち着かない面持ちの亮太であった。
亮太は、今日のデートプランを頭の中で考えていた。
(お参りをしてから、おみくじは引きたいよな。その後屋台とかを回って、どこかカフェに入る…そこから何話そうかな。どんな雑貨屋に行くかとかは聞いてみよう。それから―)
考えがまとまらないうちに、
「お待たせしましたーっ!」
という明るい宏美の一声によって、亮太の頭の中はシンプルになった。
(あれこれ考えずに、今日を楽しもう。)
「久しぶりです。全然待ってないので大丈夫ですよ。」
「ほんとですかー?ありがとうございます!ちょっと、準備に時間かかってしまって。」
「あはは。そうだったんですね。あ…その髪留め素敵ですね。」
この前の合コンでは下ろしていたロングヘアーが、今日は後ろにまとめられてアップになっており、アンティーク調の髪留めが添えられていた。
髪型で大分印象が変わった気がする。
前も明るい感じだったけど、今日はより一層、活発な印象を受ける。
よく雑貨屋で目にする大好きなアンティーク調の髪留めも目に入り、自然とほめることができた。
神社の参道は結構長かったが、合コンの時にゆっくり話せていなかった分、お互いの仕事の話や出身の話など話題は尽きなかった。
参拝が終わり、屋台を探したがご時世のせいか神社付近には見当たらず、宏美が見つけたクレープ屋のクレープを食べることにした。
外はまだ気温が低かったが、歩きながら一緒にクレープを食べていると不思議と寒さも平気だった。
時間も夕方に差し掛かり、
「これからどうしようか?ご飯食べに行きませんか?」
と亮太から切り出した。
しかし、
「あ、ごめんなさい。実は来週重めの会議があって、その準備をしないと…」
とやんわり断られてしまった。
「そうなんだ。了解!また落ち着いたらにしよう。」
「ありがとうございます!この埋め合わせは絶対しますっ!」
「わかった。楽しみにしておきますね。」
そう言って別れた亮太は、この時はまた宏美にすぐ会えるだろうと思っていた。
だが、その機会は中々やってこなかった。
続く…
「Coiラボ」は、今後も日常の中で発展したご縁や、新しい出会いに繋がる気付きをストーリーを通して発信していきます。