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バリキャリ女子の恋愛模様。仕事以外に大事なことって何?第4話

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あらすじ

副室長の条件となる全社イベントの幹事をやることになったかなは、余興担当となり、ゆうたと一緒に料理を披露することになった。

料理なんて余興になるのか?と疑問をぶつけるかなを優しく諭すゆうた。
仕事に対しても的確なアドバイスをもらい、ゆうたの物腰の柔らかさに次第に惹かれていくのであった。

〜BBQ当日、AM11:00〜

私の名前は上田かな。某コンサルタント会社で、企画職をしている。
自分で言うのもなんなんだけど、仕事一筋の、絵に描いたような「バリキャリ女」である。

仕事にしか興味のない私は、社内の催し事には極力関わらないようにしていた。
プライベートの時間は専ら1人で過ごしていた私が、今BBQ会場の片隅にある洗面台でじゃがいもを洗っている。

そう。これからいよいよ余興の料理実演が始まるのだ。

社長の乾杯を皮切りに会場は盛り上がりを見せていたが、それに伴って緊張の度合いもどんどん増していた。

この2週間は怒涛のような毎日だったが、これまでの社会人生活を振り返ってみると、1番充実感のあった時間だった。
早瀬さんと、ほぼ毎日のように今日のための練習や打ち合わせをしていたからだと思う。

物腰柔らかい早瀬さんと話していると心が落ち着くし楽しかった。
仕事に対する取り組み方も尊敬できるし、学べることがたくさんあった。

今日の料理の題目も、早瀬さんが社長にリクエストを聞いてくれた。
社長のリクエストは「おいしいパエリアが食べたい」とのことだった。

そのため、当初は食材だけの指定の予定だったが、方向転換をして調理方法で場を盛り上げよう!ということになった。
調理の手順を書き出し、盛り上げどころを設定してからはひたすら練習を重ねた。

私は、メインの食材となるスズキの下準備を担当することになった。
幸い料理はそれなりにする方だったので、何度か練習することでおろし方は覚えることができた。
その後は、手際の良さに磨きをかけていった。

早瀬さんは料理が趣味で、知識も豊富で映える調理の仕方も心得ており、いろいろアドバイスというか、ダメ出しをされ、指摘されたところを改善するのを繰り返していった。

それが何より楽しかった。

〜同日、PM12:00〜

宴もたけなわ。そろそろ余興の時間だ。

簡易的に用意されたステージの袖で、私は早瀬さんと待機している。
緊張してそわそわしている私に向かって早瀬さんが

「大丈夫。あれだけ練習したじゃないですか。」
と声をかけてくれた。
確かに。と私は落ち着きを取り戻せた。

司会のアナウンスとともに、会場から拍手があがる。

「さぁ、いきましょう!」
と私の手を引く早瀬さん。

司会の人に促され、軽く自己紹介をした後に今回の余興の題目が発表された。
わー!と盛り上がる会場の中には、ステージ上に立っているかなを珍しがる声もあった。

ステージ横のキッチンスペースに移動して、2人は早速調理にとりかかった。
色とりどりの食材が手際よく直径1mくらいの大きな鉄板の上に並べられていく。

程なくして、早瀬さんは私に目くばせで合図を送った。いよいよ見せ所だ。

かなは、キッチン下に置いてあった巨大なアイスボックスから、メインの食材であるスズキを取り出して、会場に見えるように高々と掲げた。
その大きさは80cmはありそうだ。

「おー!!」
という会場からの歓声を他所目に、スズキをまな板に置き下準備にかかった。
1匹丸々をそのまま鉄板で焼くことも考えたが、日の通り方などを考慮して、今回は3枚におろすことにした。

ウロコを勢いよくとり、手際よく包丁を入れていく姿に会場の目は釘付けだった。
何より、かなの両手に巻かれている数々のばんそうこうが、調理を見守る聴衆の心を打ったのだった。

無事に食材の下準備を終え、早瀬さんがワインをふりかけ、フランベすることで勢いよく炎があがった。
1番の盛り上がりをもって調理のパフォーマンスは終了し、パエリアが炊き上がるまでしばし歓談の時間となった。

パフォーマンスを終えて、安堵の表情を浮かべながらステージ袖に戻った。
早瀬さんは、パエリアの完成時刻やらこのイベントを仕切る役割もあったので、ステージに残っていた。

袖に戻ったかなを待っていたのはいつぞやの清掃員のおじさんだった。

「あれ?清掃員の方も参加されてたんですね!」
「ええ、とても素晴らしいパフォーマンスでしたね。」
「ありがとうございます!なんとか、無事終えることができました。」

「学ぶことはありましたか?」
「そうですね。仕事以外にも、充実感を得られることがあることを知りました。打ち込めば、どんなことも楽しめるのかもしれない、と初めて思いました。このイベントの準備に関わるようになって、仕事以外に使う時間が増えましたが、不思議と仕事の効率は上がったんです。」
「ほっほっほ。それは不思議ですねー。なぜでしょうね?」

「多分、なんですけど、人のために仕事をしようとしたからかと思います。まだ、なんとなくしかわからないんですけど。」
「うんうん、それで良いですよ。常に色んなことに挑戦して、成長していくことが大切ですからね。おや、相方が戻ってきたみたいですよ。」

そう言われて後ろを振り返ってみると、早瀬さんがステージから降りてくるところだった。
「あ、上田さん。お疲れ様でした。」
「お疲れ様でした。なんとかなって良かったですね。」

「そうですね。あとは無事に炊き上がってくれればいいんだけど。」
「大丈夫ですよ!きっと。」

「そうですね。あ、上田さん、ちょっとお話があるんですが、、、」
「はい?」
「僕と付き合ってくれませんか?」
「…え?」
「まだ知り合ってから日も浅いんですが、素敵な人だなー、と思って。もっと上田さんのこと知りたいなと。」

いきなりのことに面を喰らったが、私の答えは決まっていた。
「私も、早瀬さんのこと、もっと知りたいと思っていました。ぜひ、よろしくお願いします。」
「よかった!断られたらどうしようかと思った。」
ふと、すぐ後ろに清掃員のおじいさんがいたことを思い出し、恥ずかしさが込み上げてきた。

かなが後ろを振り返るとそこには誰もいなかった。

「あれ?清掃員のおじいさんがいない。」
とポツリとかながこぼすと、

「清掃員?そういえば、さっき会長が向こうに歩いて行くのが見えましたね。上田さんとお話されてたんですか?」
という早瀬さんの言葉を聞き衝撃が走った。

「え!!会長だったんですか?あの方!?
すみません!私、あの、すごく失礼なことを言ってしまったので、謝ってきます!」

そう早瀬さんに告げ、会長の後を追いかけ会場に戻ると盛大な拍手で迎えられた。
「あの手際の良さ、素晴らしかったよ!」
「カッコよかったです〜!今度魚の捌き方教えて下さい​!​」
と、いろんな人から声をかけてくれた。
無視する訳にもいかず、一人一人に応対していたら、すっかり会長を見失ってしまった。

後から会場に戻ってきた早瀬さんも人に囲まれて身動きが取れなくなっていた。
程なくして炊き上がったパエリアが皆に振る舞われ、この日のパフォーマンスとBBQのイベントは大成功となった。

〜2ヶ月後、始業前の企画室オフィス〜

「おはようございます!上田副室長!!」
朝、企画室のオフィスに入った私は後輩社員から挨拶された。

「おはようございます。副室長とか付けなくていいですよ。」
と返事をして、自席に着く。

あの怒涛のBBQから2ヶ月。私は企画室の副室長となっていた。

あのイベントの後、社内を歩いているとよく声をかけられるようになった。
まぁ、みんなが見てる前でパフォーマンスをしたのだから当然といえば当然か。

驚いたのは、イベントの後すぐに副室長就任の辞令が出たこと。
ちょうど異動が行われる時期でもあったか、会長からの力添えがあったと室長からは聞いている。

私自身、今回の経験からは学べることが多かった。
あれから、他部署との調整がすごくやりやすくなった。
顔や人となりを知っていることで、こんなにも仕事がやりやすくなるとは。

仕事以外の「幅」を持つことが大切なのだと知ることができた。
仕事以外といえば、早瀬さんともうまく行っている。
毎週土日に一緒に気になるお店にご飯を食べに行ったり、お互いの家で料理をしたりして、順調に仲を深めている。

ただ、まだお互いに早瀬さん、上田さんと呼んでいるのが目下の課題だ。
(いつ、ゆうたさんと呼ぼうか?)
タイミングを模索している。

そんなことを考えていると携帯にメールの着信を知らせる通知音が鳴った。
早瀬さんからだった。

「かなさん、おはよう。もう出社されてますか?今週末はこないだ話していたカレーのお店に行きませんか?今日も仕事頑張りましょう!」

この数行のメールだけで、やる気がどんどん湧いてくる。
それにしても、自分の悩みが見透かされているみたいに、自然と解消されていくのが心地よくもあり、少し申し訳ない気もしている。
でもそこは、甘えてしまってもいいのかもしれない。

「ゆうたさん、おはようございます!カレー楽しみにしてますね♪仕事頑張りましょうー!」
と返信をして、私は仕事にとりかかった。

嬉しそうな笑顔を浮かべて仕事をするかなの様子を、オフィスの入り口から会長と室長がにこやかに眺めていた。


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「Coiラボ」は、今後も日常の中で発展したご縁や、新しい出会いに繋がる気付きをストーリーを通して発信していきます。

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