壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第4話〜

〜前回までのあらすじ!〜

主人公・二階堂 薫は◯×商社に勤める「勤続10年・仕事一筋・一筋すぎて童貞」という新任若手課長!!
ひょんなことから二階堂は、壊滅寸前の第七営業部の再興と会社の一大プロジェクトのポジション争いを懸けた、運命の懇親会幹事に任命される!

幹事経験のない二階堂は、犬猿の仲である第六営業部の飲み会を潜入調査することに!
そこで第六営業部のエリート社員・三宮 衛から『第六と第七営業部は犬猿の仲』という噂がデマだったことを知らされる!
正体不明の黒い影と戦う二階堂(童貞)!!
そして狙われる相方・一ノ瀬(美少女)!!
クライマックス直前!!!
果たして、特命宴会課長の運命や如何に!? 

【登場人物】
・二階堂 薫(にかいどう かおる)・・・◯×商社 第七営業部の課長。学業と仕事一筋。そのため童貞。通称『仕事人』
・一ノ瀬 翔(いちのせ しょう)・・・◯×商社 第六営業部に配属された超絶美少女の新人。通称『飲み会のモーツァルト』
・五利 文明(ごり ふみあき)・・・◯×商社 第六・七営業部の部長。第七営業部を再興するため、二階堂に懇親会の開催を依頼する。実は大の甘党。通称『世渡り上手』
・三宮 衛(さんみや まもる)・・・◯×商社 第六営業部のエリート社員。社内でも『仕事人』と称賛され、五利部長の右腕として働いている二階堂のことを尊敬している。角刈りのスポーツマン。

カッチコッチ カッチコッチ…

聞き慣れた時計の音が鳴り響く。
木曜12時の針を二階堂はチラッと横目で見やった。

オフィスの時計ではない。
この日、二階堂は珍しく自分の部屋で平日の正午を迎えた。

「二日酔いだ…」

前日に行われた第六営業部の壮絶なる飲み会の緊張から解かれた二階堂は、一次会が終わり、二次会、三次会へと連れ回されて帰ってきた頃には朝の5時を迎えていた。
家に帰ってきたことは覚えているが、残念ながら二次会以降の記憶は一切無い。

何故か携帯にはチャットの送信履歴があり、「本日、体調不良のため午前休を頂きます。」という勤怠報告だけはしっかりと行われていた。

「出社しなければ…!!」

二階堂は気だるい体を無理やり起こし、洗面台に向かった。
歯を磨き、顔を洗い、髭を剃り、むくんだ自分の顔を見た。
おずおずとスーツに着替え、「今週もあと二日…!」と気合を入れ直すと、二階堂は先月新調した革靴を履いて駅のホームに向かった。

 

13時半、午前休を取った二階堂は「おはよう、すまないね」と第七営業部の面々に挨拶しデスクに着いた。

「ふぅ…。よし!!」

午前中に溜まった仕事を片付けようと気合を入れ直した瞬間、ついさっきまで聴いていたような馬鹿でかい声が聞こえた。

 

「二階堂さん!!!!!!!!」

二日酔いの頭痛を蒸し返すような、大音量。
声の主は、第六営業部のエース・三宮 衛だった。

二階堂は「お、おはよう…!」と頭を抑えながら挨拶した。
第七営業部の面々は、目を丸くして三宮のことを見た。

当然だ。

犬猿の仲である第六営業部のエースが、第七営業部の課長に向かって挨拶をしているのを見て「何か事件でも起きたのか」という表情で二人を見ていた。

肝心の三宮の顔は、激昂して真っ赤になっていた。
まさに『鬼の形相』という言葉がぴったりの表情だ。

「ど、どうしたんだい…???」

「少し、会議室で話せますか…?」

 

ま、まさか…!!!??
二階堂は「昨日の酒の席で何かやらかしたのでは??」と思い、震えながら立ち上がった。

「…こちらです」

先導する三宮の後ろを付いて行く。
いかにも力がありそうな、その気になれば熊でも倒せそうな巨大な背中を見ながら、二階堂はリードに繋がれた子犬のように会議室の前に導かれた。

 

コンコン…

「失礼します!!」
三宮は大きな身体で一礼して、会議室に入った。

すると中にもう一人の男性が…。

 

「五利部長!!!??」

ドアを開けると、そこには腕を組みながら難しい顔をして座っている五利部長の姿があった。
五利部長は何も語らず、二階堂と三宮を向かいの席に座るよう促した。

まさか五利部長が出てくるとは…。
自分は昨日、一体何をやらかしたのだろう…!??

そんな不安が二階堂の頭をよぎった瞬間、五利部長が口を開いた。

「二階堂くん…」

「はいっっっ!!!?」

「まずいことになった…」

二階堂は緊張と不安と心配を飲み込むように、ゴクリと唾を飲んだ。

「一体…どんな用件でしょうか…???」

「実は…」

五利部長の表情は曇ったままだ。
しかし大きな円い目は鋭い眼光を放っている。

次の瞬間、二階堂は自分の耳を疑った。

 

「実は、一ノ瀬くんが本日付で台湾に常駐することになったのだ」

 

ん?

台湾??

一ノ瀬が???

 

「え!?
私が昨日の飲み会で何かやらかしたのがキッカケで!!??
どうして一ノ瀬が台湾に行くことになったんですか!!!???」

「??何を言っとるんだ?」

「二階堂さん!!昨日飲み会で一ノ瀬に何かやらかしたんですか!!!???」

三宮が、物凄い形相で二階堂に詰め寄った。

「い、いや!!わからない!!実は昨日二次会以降の記憶が全く無くて…!!」

「???一ノ瀬は一次会で帰しましたよ?その後に何かあったんですか??」
三宮はよく分からないと言った表情で、二階堂の顔を見つめた。

 

「あ…。たしかに、一ノ瀬くんは一次会で帰ったな…。その辺は微かに記憶がある…」

二階堂は、一ノ瀬と店の前で解散した記憶をうっすらと思い出した。
たしかその後、男だらけで別の居酒屋に行って、メガジョッキばかりをテーブルに並べたような気がする…。
そこでグラスを倒して「水餃子」が「ハイボール餃子」になってしまったような…。

 

「いや。何やら変な勘違いをしているようだが、今回の一ノ瀬くんの件と昨日の飲み会は全く関係ない」
五利部長はさっきより落ち着いた口調で話し始めた。

良かった…。
昨日自分が何かやらかした訳じゃないのか…。

二階堂は少しほっとして胸を撫で下ろした。
と同時に新たな疑問が浮かんだ。

では何故、一ノ瀬が台湾に???

 

「これはあくまで儂の推測だが…」
二階堂の考えを察知したかのように、五利部長はグッと身を乗り出して話を続けた。

「今回の一ノ瀬くんの異動には…。二階堂くん、君の存在が大きく関わっている」

 

「えぇーーーーーーー???」

安堵したのも束の間、「やっぱり自分かい!!」というツッコミが二階堂の脳内で爆発した。

「単刀直入に説明しよう」
五利部長が話を続けた。

「一ノ瀬くんが異動させられた理由は、二階堂くんの昇進を阻むためだ。
今度の懇親会が成功した暁には、今年度の最重要プロジェクトに二階堂くんと一ノ瀬くんを斡旋するよう上層部も含めて計画していたのだ。

しかし役員の中で一人、その意見に異論を唱える人物が居た。」

そうだったのか…。
斡旋の話は、てっきり五利部長のノリと独断と偏見で決まったものだと思っていた。
しかし、たしかにこのプロジェクトの人事は役員全体を巻き込んでいてもおかしくない話だ。
二階堂は二日酔いの頭で何とか事態を把握しようと脳味噌をフル回転させた。

「それで、その人物とは…??」
二階堂は結論を迫るように五利部長に問いかけた。

「ああ。
その人物は、役員の四嘉羽 邪昆(しかばね じゃこん)。三宮の父だ」

 

四嘉羽 邪昆!!???
なんちゅう名前だ、と二階堂は思った。

 

ん?
三宮の父?

「そうです、僕の父親です」
三宮が口を開いた。

「え?だって苗字が…」

「僕の両親は離婚していて、今では別姓を名乗っています。
僕は幼い頃に母親に引き取られ、母方の姓を名乗っているのです」

「そうだったのか…。すまない、踏み込んだ話をしてしまって…」

「いえ、もう慣れっこです。僕にとっては、それが当たり前のように育ってきましたので」
三宮は、さも当然といった顔で答えた。

「本当はこの会社に入った動機も、父と仕事をしたかったからなんです。
幼い頃の記憶で、父が仕事から帰って来て家で晩酌をする姿が何よりも嬉しそうだったので…

だから、そんな父と呑む酒は一体どんな味がするのだろう。
仕事のことを本当に楽しそうに話す父と、一緒に仕事をしてみたい。

そう思ってこの会社に入ったんです。」
三宮は熱を込めた口調で淡々と語った。

「それがまさかこんな事に…!!」
途端に、三宮のこめかみに血管が浮かび上がり、今にも怒りが爆発しそうな顔になった。
角刈りのためかハッキリと血管が脈打つ様子が窺える。

 

「あとは儂から説明しよう」
五利部長が、三宮を制した。

「今回の一ノ瀬くんの異動は、四嘉羽 邪昆の歪んだ息子への愛情が引き起こした事件なのだ。
四嘉羽には、実の愛息子・三宮くんを最速で昇進させてやりたいという思いがある。
そのため、今度の最重要プロジェクトでは一ノ瀬くんの代わりに、三宮くんを推薦したいというのが四嘉羽の考えだ。

そう…。
近年稀に見る速さで課長へと昇進した二階堂くんと共に!!!」

「なんてこったい!!!」
二階堂は思わず「/(^o^)\」の顔文字を思い浮かべて、そう叫んだ。

「エリート社員の僕も、こんな形で更なる昇進街道を突っ走るのは嫌です!!」
三宮も叫んだ。

「二階堂くん!!
一ノ瀬くんを第七営業部へ呼び戻すためには!!
四嘉羽 邪昆に、君のリーダーシップと周りからの信頼を認めさせる他に手はない!!!」

「つまり…!!?」
二階堂はゴクリと唾を飲んだ。

「四嘉羽 邪昆を懇親会に呼び!!
『仕事人・二階堂 薫』の人間性を四嘉羽に認めさせるのだ!!!」

 

次回、最終話!!
一ノ瀬の異動で、崖っぷちに立たされた二階堂!!
最強の敵・四嘉羽 邪昆との戦い!!
そしていよいよ運命の懇親会が開かれる!!
果たして、ヒロイン・一ノ瀬の運命は!?
三宮と四嘉羽の確執は!?
そして二階堂の童貞の運命は!?

To be continued

[バックナンバー]
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜プロローグ〜
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第1話〜
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第2話〜
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第3話〜
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第5話〜

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