口より先に手を出すヤツはたいてい床上手♪

この物語は自信ナシ、友達・彼女なし、夜の営み経験なし、通称3Nの25歳会社員男性が巻き起こす、奇跡のファンタジーである!

長い眠りのトンネルを抜けると、始業開始5分前だった。
「ふぅあ〜、こんな生活やめてぇな。」

眠りから覚めて、そこが雪国だったり、まして、夢の国の舞浜だったら、どれだけ幸せなのだろうか。

眠りの中で、どれだけ幸せな夢を見ても目を覚ませば、そこは家だ。
しかも今回はPCの前である。
「しかし、可愛かったな〜あの女の子。」
「かなりのタイプだった。」
「かわいいは正義、愛は地球を救う!」
くだらない独り言が、口から漏れていた。
様々なことが溜まりに溜まっていて、もはや末期である。
PCの画面に映る女の子を観ながら寝落ちしたかと思ったら、最高の夢を見た。だが、すぐに変わらない日常&現実を見る。

「仕事と上司、めんどくせぇえなぁ。」
あまりにもつまらないので、早く現実から夢に戻りたいと思う。

気持ちいい空間を漂っていたかと思ったら、5分後にはやりたくない仕事&話したくもない上司とおはようございますだ。
これよりメンタルが削れる拷問は他にあるのかと、僕は問いたい。

子供の頃は何事も器用にやれた。
運動と勉強が両方できる、いわゆる小学生の頃モテたでしょーと言われるタイプだ。

その通りで、小学生の頃が人生のピークだったのではないかと思うくらいモテた。
足が速くて、勉強ができれば、顔がそうでもなくてもモテるのが小学生である。
そのことに調子に乗ってしまったのが、運のつきだ。
人気者だと勘違いをして、努力しなくなってしまったのである。
それもそうだ、自分が思っている以上に周りからもてはやされたからだ。

「あの頃に戻りてぇな〜。」

何の努力をしなくても、学校での地位を手に入れたので、自分は天才だと勘違いをしていた。
いや、勘違いどころか完全に世の中をなめていた。
だが、人生を山に例えたら、一度頂上に登るとあとは下るだけである。

中学生になった瞬間、勉強も部活も何もかも上手くいかなかった。
「下るスピード、速かったなぁ。」
頂上からゆっくり歩いて下るのではなく、地面を目掛けて空から落ちているようだった。
少年漫画の主人公だったら、そこから逆転のシンデレラストーリーがあると思う。
しかし、現実は何も起こらない。

自分を待ち受けていたのは、かぼちゃに乗らず、魔法にもかかっていないシンデレラだ。
そこから自分は輝けない、出来ないと思い込んでしまい、3N街道を突っ走ってしまうのだ。
PCを立ち上げて、9時の始業MTGに参加する。
MTGと言っても、ただの出欠確認に過ぎない。
基本的に画面オフでミュートだ。

ログインしていれば、何も問題はない。
「この程度だったら、やらなくても良くね。」
「生真面目にルールを創ろうとするところが、日本企業だよな。」
基本的に人や周りのせいにする。
良くないと思っているが、そうでもしないとやっていられない。

ITエンジニアという肩書きはあるが、1日中ただずっとPCとにらめっこをして、メールとチャットの返信とエクセルを操作するだけである。
本気でやりたくてその仕事を選んだわけでもないし、とても地味である。
やりがいという言葉はどこかへ置いてきてしまっている。
あとは5日間、面倒くさい上司とこのつまらない作業をこなすだけだ。
上司は仕事に対して、完璧主義なためとにかく細かいのだ。
生活がかかっているからとはいえ、中学生の部活動よりやらされている感は強い。
また、辞めても他にやりたいこともないので、今の仕事を続けている。

ただ一つ、楽しいことがあるといえば、同期とチャットで話すくらいだ。
「航平とチャットでもするか。」
航平は会社の同期で、彼を一言で表すと、某未来系日常マンガに登場する出来すぎ君だ。
本当に何もかも出来すぎている。
めちゃくちゃ可愛い彼女がいて、仕事もできて、人望もある。

しかも、元々器用なタイプではなく、努力で全てをこなしているから、脱帽である。
僕が持っていないものを、3倍ましくらいで手にしているので、嫉妬すらしない。
航平はどんな人でも受け入れるとんでもなくでかい器がある。
誰がどう見ても、上司の責任逃れにしか思えないことでも、受け入れる。
「山田主任、理不尽過ぎたわ〜、昨日奥さんと喧嘩したのか。」
と、何でも笑いに変えてしまう。
そんな航平も元々は自信がなかったらしく、努力で変えてきたとのこと。
本当かよ!と思いたくなるが、航平なら出来そうなイメージがあった。
それくらい僕の中で、航平から強いものを感じる。
「航平、今暇ー?」
大学生が送りそうな内容である。
「めっちゃ、暇してるー。」
「ずっと、動画観てた。」
真面目な人間が、サボっているのを知ると勇気をもらえる。
ただ、航平は仕事の要領もクオリティも高いので、真似はできない。
「何の動画観てたのー?。」
完璧超人が、普段何を意識して生きているか純粋に気になった瞬間である。「え、フットサルの練習動画。」
この人物は何を目指しているのだろう。

確か学生時代は、水泳部だったはず。
「え、何、最近フットサルとかしているの?」
ふと思い、聞いてみた。
「そうなんだよー、水中は制したから、今度は陸地に目を向けようかなと思って。」
意味不明過ぎて、持っていたコップが宙を舞いそうになった。
「なにそれ、めっちゃ面白いじゃん。」
「良かったら、翔太も一緒にやらない?。」
「めっちゃたのしいよー。」
陰キャだが、一応学生時代はバスケ部だったので、スポーツは好きだ。
「分かった、ぜひよろしく。」
「そしたら、来週の土曜日空けといてー。」
普段、何かしら誘ってくるのが航平しかいないので、予定は基本的に空いている。
まあ、平日も休日も家でゲームしかしていないので、正直垣根はない。
「りょうかい、空けとくわー。」
このフットサルが僕の人生に奇跡を起こすなんて、この時は全く想像もしていなかった。

ー12年前ー

12年前の夏にあったあのことは、今でも覚えている。
きっと季節がいくつも移り変わって、何歳になっても覚えているだろう。
小学6年生、12歳の僕は人生のピークを迎えていた。
「また航平が1番かよ。」
「マジで、つまんねぇな。」
いつの時代も、連休前はテストがあるものだ。
「まあ、運が良かったので。」
いつものようにすまし顔で、100点を取る。
みんなが自分に注目するこの瞬間がたまらなくて、小学校に通っているようなものだ。

今思うと、とてもませていた。

自分でいうことではないが、憎たらしい子供である。
点数が高い順で、回答用紙を返すのは、僕らが小学生の時代で終わっていることだと思う。

個人の成績がバレてしまい、プライバシーに値するため、近年ではほぼないと聞いたことがある。
だが、このクラスで僕の次に呼ばれる人物は、いつも決まっている。

先生もいつも同じことを繰り返しているかのように、彼女の名前を呼んだ。「次に点数が良かったのは、志穂。」
「惜しかったな〜、次こそは100点だな。」
山本が僕を含めて4人もいるから、先生も苗字ではなく、名前で呼んでいる。「先生、いつもそれしか言わないじゃん、私に興味ないの?。」
志穂の方が格段にませていた。
「航平は算数は得意だけど、理科は私の方が好きだから負けない。」
「いや、それ好きと点数が高いは関係ないし。」
今思うと、とても可愛いやりとりである。
志穂は僕の幼馴染だ。

顔立ちははっきりしていて、モデルの武田玲奈そっくりだ。

それに加えて、勉強もスポーツもできるので、男子からの評判はとても高い。志穂を一言で表すと、クラスのマドンナだ。

クラスの人気者とクラスのマドンナが幼馴染なんて、まるでマンガの世界のようだ。
保育園から同じなので、気付いたら9年間も同じである。
そのため、お互いの両親が仲が良い。
最初はただの友達だと思っていたが、12歳の少年は思春期真っ盛り。

目の前の志穂というクラスメイトを完全に女の子として意識していた。
もう、友達として見ることが出来なくなっていた。
そんな志穂のことを狙っている男どもは、星の数ほどいる。

だけど、1番有利なのは自分と自信があった。
なぜなら、9年間も一緒にいたからだ。
僕は夏休み直前、終業式の日に人生で1番のチャレンジをした。

帰ろうとしていた志穂を呼び止め、こう言った。
「来週の土曜日の夏祭り、一緒に行かない?。」
志穂から返ってきた言葉は。
「うん、わかった。」
僕の人生で、1番アツい夏が今始まる。

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〜第2話〜

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