壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜プロローグ〜

カタカタカタカタ

とある平日の正午。
◯×商社 第七営業部のオフィスにはいつもパソコンの音が響き渡る。

「どうにかならんもんかな〜…この雰囲気。」
そう思いながら第七営業部のサブリーダーを務める「二階堂 薫(にかいどう かおる)」はモニターの上から顔を出してオフィスを見渡した。

◯×商社は創業50年目。
東証一部に上場している大手企業だ。

ただ最近は不景気の煽りから業績も中々伸び悩んでおり、事業規模の縮小も検討されている。
この第七営業部も、規模縮小を検討されている真っ只中の部署の一つだ。

「何か大きな起爆剤になる出来事はないだろうか…。」

そんなことを考えながら『仕事人』として有名な二階堂は、ランチミーティングに行くためにパソコンを雑に鞄へ詰め込み、近くの喫茶店へ足を向かわせた。

今年で入社10年目。
同期と比べると比較的早いペースで課長まで昇進したものの、最近はチームとして中々結果を出せずにいるのが悩みの種だ。
喫茶店に向かうと、既にバナナセーキを頼んで席に座っている五利(ごり)部長の姿があった。

「二階堂くん!!」
五利部長は店内に響き渡る声で、入り口に立つ自分を呼び寄せた。
今日はランチミーティングで、海外のインフラ整備に関わる新事業の立ち上げについての打ち合わせだ。

「お久しぶりです、部長。」

五利部長は中々オフィスに訪れることは無い。
部内のマネジメントは課長の二階堂に任せており、部長は専ら客先の打ち合わせや接待のために社外を飛び回っている。

こう言っては何だが、部長は『世渡り上手』としても有名で、客先からの評価も高いやり手の上司だ。

「それでは新事業の立ち上げについて、簡単にご説明します。」
一通りの説明が終わった後、五利部長は体を乗り出して二階堂に聞いた。

「それで、どうだね?最近の第七営業部の雰囲気は?」
二階堂は少しためらった表情を見せてから、言葉を選んでこう答えた。

「正直…活気があるとは言いづらいです。最近は業務縮小の噂もあり、このままの成績が続けば第七営業部も縮小の対象になりかねません。せめてもっと明るく、みんなが率先してやる気を出せるような職場の雰囲気があれば。五利部長がオフィスにいた頃は、もっとみんな明るく活気に満ちた雰囲気があったのですが…」

「う〜む…」
五利部長は太い腕を組んで、深刻そうな表情で思いを巡らせた。
しばらく黙り込んだ後「じゃあ…」と五利部長がドッシリとした声で喋り出した。

「懇親会でも開いてみたらどうかね?」
そう言うと五利部長は大きな目でジッと二階堂を見つめて、答えを待った。

「そう言われましても、私は飲み会や懇親会を進んで開くタイプでは無いですし。何よりそういった場で、部下やメンバーとどんな話をすれば良いのか分からんのです!」

「お前は童貞か!!」
五利部長は、まるで運動部の先輩が出来の悪い後輩を叱るように二階堂のことを叱責した。

「すみません…。童貞です。」
二階堂は自分が童貞であることをカミングアウトした。

生まれてこの方、学業と仕事一筋。
脇目も振らず、ただただ自分の研鑽のために力を注いできた男。

それが『仕事人・二階堂 薫』であった。

「う〜む。しょうがない。儂が兼任している第六営業部に『飲み会のモーツァルト』と呼ばれている新人がいる。若いが中々のやり手だ。その新人・一ノ瀬 翔(いちのせ しょう)くんから飲み会の何たるかを学んでみなさい!きっと今後の君のキャリアにも役立つだろう!!」

五利部長は、まるで「これは業務命令だ」と言わんばかりの熱い眼差しで二階堂の目をジッと見つめた。

「…分かりました。やってみます!」
二階堂は「未知の新人『飲み会のモーツァルト・一ノ瀬 翔』が開く懇親会とは一体どんなものなのか!?」と想像を膨らませながら喫茶店の席を立った。

これはそんなアオイホノオ的な情熱を纏いながら、第七営業部の存続と再生を懸けた、一大飲み会スペクタクルである。

To be continued

[バックナンバー]
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第1話〜
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第2話〜
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第3話〜
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第4話〜
壊滅部署を救え!特命宴会課長 現る!! 〜第5話〜

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